General incorporated association Hirabayashikai
2020年11月20日
産学官共催セミナー「国産材・早生植林材活用情報のアップデート~ポストコロナ時代・未曽有の環境変化に備えて~」が11月20日(金)午後1時30分より開催された。主催は(公社)日本木材加工技術協会関西支部早生植林材研究会・林野庁近畿中国森林管理局・京都大学・京都府立大学・(一社)平林会。
今年は春先からのコロナ騒動で密になるセミナー等が各方面で中止か延期に追い込まれる中、代表世話人の村田功二氏(京大准教授)らが中心となって実現に向けて種々検討、大阪南港ATCの会場を発信基地とするオンライン方式での開催を決断した。その甲斐あってオンラインサイト会場となったATCコンベンションホール(定員120名)には参加者を絞って31名、オンラインでの参加は58名に達した。
セミナーは京都府大の宮藤久士氏が司会を担当、まず主催者を代表して近中局の山口琢磨局長が、収束の兆しが見えない中、本セミナーの開催に努力し新しいWEB形式を採用して開催に漕ぎつけた各位の努力に謝意を表し「造林期間の短い早生樹の可能性は大きい。当局もセンダンに着目して取り組んでおり荒廃農地へのアタックは注目に値する。情報交換を密にしたい」と挨拶。続いて九州熊本発のセンダンを本州で初めて導入・植林した地元平林会の村上高兒理事長が歓迎の言葉を述べ、早生植林材研究会の横尾國治前世話人代表(ユニウッドコーポ会長)が本セミナーで訴えたい骨子を次の様に説明した。
村上理事長
山口局長
横尾代表世話人
「サスティナブル」が判断基準
当研究会の活動は15年に及ぶ。前半は熱帯雨林の代替材(早生樹)の研究に費やし、後半はセンダン等の国産早生樹の可能性の研究に没頭した。今般のコロナ、パンデミックに対して私たち研究者に一体何ができるか?これからどの様な変革が来るか?今回のパンデミックは①グローバル化。モノ・カネ・情報はOKだがヒトの動きが拡散②地球規模の気候変動による温暖化③熱帯雨林の伐採の奥地化④社会的影響=欲望(強欲)資本主義、大都市集中型、が原因だと分析する。ウィズコロナ時代だと言われるがデジタルではモノを生み出さない。読み解く鍵は「SDGs」の中にある。これからは「サスティナブル」が判断基準になる。我々の木材加工技術でもって克服すべき要素も多々あるが、木材はサスティナブルには最適の資材。特に早生樹はその循環が短い。木材が見直される時代に突入した。気候変動による災害が毎年多発する。これからの経済戦争には「脱炭素」が必須だ、我々は戦います。有馬先生によると木の半分が炭素。1万m3の木材を使えば重さは約5千トン、その半分2500トンの炭素を固定する。その炭素を計算すると約9166トンのCO2を固定していることになる。CO2に換算した数字の価値を広く世間に伝えたい。
基調講演三氏(オンライン)の最初は大橋瑞江兵庫県立大学教授が「森林生態系における物質循環」をテーマに講演、続いて山崎真理子名古屋大学大学院教授が「森-・街・人を育む木質化プロジェクト」について講演した。3人目はこの4月に近中局から林野庁に栄転した櫻井知課長補佐が「木材利用拡大に向けて」をテーマに講演、林野庁が提唱する「ウッド・チェンジ」の現状と課題を報告、木材の成長産業化の鍵は「需要です」と強調した。
小憩後は事例報告4件。1件目は、九州大学農学研究院の阪上宏樹助教が「九州支部国産早生樹連絡会の発足と活動」について、去る2月末に本郷林野庁長官も出席して開かれた九州大学でのシンポジウム「早生樹最前線」を中心に報告(オンライン)、2件目は近中局の草深和博課長が近中局が取り組みだした「里山広葉樹林活用・再生プロジェクト」についてその趣旨と経過を報告した。
ウィズコロナ時代は「SDGs」
3件目の京都大学村田功二准教授は当研究会の代表世話人だが今回は「宇宙木材研究会」として登場した。同氏の活動は遊び心あふれたユニークなものが多い。ギター等の楽器を製作して実際に自分で演奏したり、テレビ「所さんの目がテン」には頻繁に出演して里山再生プロジェクトのお手伝いまでやっている。今回のテーマは「宇宙木材利用研究の最新情報」。「地球外森林は可能か否か?」を探るべく、宇宙空間での樹木の育成と木材利用を目的として進めている。一見、荒唐無稽な研究だと思ったが聞いてみると夢と希望にあふれた研究に思えてきた。最後のユニウッドコーポ田代秀徳氏による「SDGsを活用した木材活用」を以ってセミナーは終了、宮藤MCの「暗い気持ちを捨てて未来志向の明るくポジティブな気持ちで乗り切りましょう」の言葉で閉会した。」