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2020年4月20日

大阪の木材人へのメッセージ

コロナにくじけない

 

一般社団法人大阪府木材連合会会長 津田潮

平林会


(一社)大阪府木材連合会の会長津田潮氏より大阪の木材業界に次のような激励の言葉が発せられました。

〇「当面の間,休業させて頂きます」。臨時休業や営業時間の短縮を知らせる張り紙と共にシャッターが下りた店舗が並んだミナミの心斎橋、戎橋筋商店街。新型コロナウイルス感染防止のための外出自粛で人影はまばら。出口の見えない長い闘いが続く。「がんばろう!!」「負けへんで」「がんばろう日本!」「世界中の人々が早く元気に」。それぞれの店に張り紙が見える。その一つ一つには励まし合い、くじけない大阪の土性骨の強い気持ちが込められている。以上は最近の報道内容である。

〇現在の混沌たる状況は、幕末の災厄に似ている。当時天然痘は防ぐ方法すらない禍であり、多くの人が死んだ。もうひとつはコレラ。当時この病気の正体は全く不明で、江戸時代に何度か大流行して多くの死者が出た。安政5年の大流行の時は米国ミシシッピ号が罹患者を持ち込み長崎から大坂を経てあっという間に江戸へ達した。人々はバタバタと倒れ打つ手もなく、コレラが終息するのをただ待つのみであった。

〇このような中にあって、蘭学の碩学緒方洪庵は、大坂の適塾(大阪市中央区北浜3丁目 現存)で福沢諭吉、大村益次郎,橋本左内、手塚良仙(手塚治氏の曽祖父)を始めとする多くの塾生に蘭学を教える傍ら除痘館を設立した。そこで、当時死亡率が2割を超える恐ろしい感染症であった天然痘から子供達を守るために多くの人の偏見と闘いながら、牛痘種痘法(牛からとったワクチンを使用。1796年ジェンナーが始めた)による予防接種活動を実施した。これは当時の常識としては想像を絶する試みであった。この活動は世界規模で広がり、1980年、WHOは天然痘の根絶を宣言。ある一つの病気を社会活動を通して根絶させた人類史上唯一の快挙である。

〇また、コレラに対しては「虎狼痢治準」を上梓し冷静に症状や治療法を記述して他の医師にも指針を与えた。今の日本人が健康で暮らせるのは、洪庵を始めとする蘭方医達の血の滲む努力と苦しみのおかげであろう。それにしても洪庵の率いる適塾の存在は、みなぎる新しい知識への旺盛かつ貪欲なチャレンジ精神に基づく実に革新的雰囲気に満ちたものであったと言える。

〇司馬遼太郎は、教科書にも掲載されているその著「洪庵のたいまつ」の冒頭で「世のために尽くした人の一生ほど、美しいものはない。ここでは特に美しい生涯を送った人について語りたい。緒方洪庵の事である。この人は江戸末期に生まれた医者であった。かれは、名を求めず、利を求めなかった。あふれるほどの実力がありながら、しかも他人のために生き続けた。そういう生涯は、はるかな山河のように、実に美しく思えるのである。……」と記している。

〇大阪の木材界は、戦後のどさくさにも草根たくましく復活し商都大阪の繁栄を再び築いた。私たちが今回、これだけ健康、体の免疫力に敏感になり、感染症に対して明日はわが身だと切実な気持ちを持ったことは初めてのことである。こういった状況を奇貨として、今後木材が健康や免疫力の向上に寄与する優れた性能を有していることを、私たちはもつともっと言い続けることが大切だと思う。

〇かってコレラや種痘に無知であった時代、大騒ぎしながら通過した試練に私たちは再び遭遇している。しかし、大坂から江戸まで東海道を15日かけて歩いた時代に、先達は勇気を持ってこれらの感染症に立ち向かい明治維新の偉業を成し遂げた。
〇歴史学者磯田道史氏は「生態系の破壊がウィルスと人間との距離を縮め爆発的に蔓延した」と言われている。グローバルな時代、自然や生態系との付き合い方の根本的な意識改革、実践の変革が迫られている

〇伝統ある大阪木材界は今こそ、第二の適塾の気持ちで頑張っていきましょう。