General incorporated association Hirabayashikai
2017年8月29日
(公財)日本木材加工技術協会関西支部早生植林材研究会(代表世話人・横尾国治氏)・(一社)平林会(理事長・村上高兒氏)主催のシンポジウム「荒廃農地の活用と早生樹材利用」が8月29日(火)午後1時30分より熊本市の「くまもと県民交流館パレア」において開催された。国産早生広葉樹「センダン」をメインテーマに開いたシンポは過去3回は大阪の平林で開催、今回は熊本地震の復興支援も兼ねてセンダン植林発祥の地「熊本」での開催となった。共催は日本木材加工技術協会九州支部、後援は熊本県・九州森林管理局・全天連ほか。 シンポは京都大学の村田功二講師が司会を担当、冒頭、地元の熊本県農林水産部三原森林局長が歓迎の言葉とともに「復旧・復興、一歩ずつ進めて参ります」と挨拶、発表に移った。 最初の講師は兵庫県立農林水産技術総合センターの山田範彦主任研究員、本シンポのテーマである「荒廃農地でのセンダン植林」について昨年春に兵庫県宍粟市の荒廃農地(耕作放棄地)で実施した実例に基づいて講演した。一言で言えば「ソフト面のハードルは極めて高い」に尽きる。ハード面では荒廃農地は、土地が肥沃で成長は早く日当たりがよく平地のため芽かきも容易、さらに搬出等のアクセスも良好―良いことばかりである。しかし「日本の農業を取り巻く環境はいずこも古くからの風習や慣習を引きずる村社会だ」と山田氏は言う。もちろん法的な規制(農作物以外の植栽不可、転用、非農地証明等)も多々あるが一番のネックは「所有者の意識」。「農作物以外への抵抗や違和感もあるが、地域外(よそ者)からの提案に対する不信感。従って地元自治会や農会を通すことが極めて重要で周囲への配慮とコンセンサスを得ること。全会一致でないと前には進まない」と山田氏は昨春の苦労話を披露した。当研究会は産業用材として「センダン」の植林を推進し、年間100万m3の生産を当初目標に置いている。その実現に向けては全国各地に点在する荒廃農地への植栽がキーとなる。 続いて九州大学の松村順司教授が登壇した。松村教授は早生植林材の仕掛人。6年前に九州大学で同教授の講演を聞いた早生植林材研究会の横尾国治代表が関西(大阪)に情報を持ち込み、触発された研究会の一行が平成25年10月に熊本視察を挙行、翌26年3月の大阪平林での「センダン」10本の植林に至ったのだ。 3番目の講師は京都府大の宮藤久士氏。政府の掲げる「日本再興戦略2016」・「未来投資戦略2017」の中から「リグニンの研究開発」にスポットを当て、リグニンからの化学原料生産について説明した。4番目には京都府大の糟谷信彦氏が「関西地区での早生樹とさし木試験」と題して13箇所で行われているセンダンの試験植林の調査内容を報告した。 続いて京都大学の村田功氏がダケカンバ製(早生樹)のギターを制作して枯渇するトーンウッド(楽器用材)の代替が可能か否かの実験結果(適と判断)を報告、併せてセンダンの防蟻性の高さもデータを示して証明した。最後は研究会の横尾代表が「早生植林材利用の現状と市場」と題して商売人の目線から早生植林材の将来性を報告した。研究会の目的はあくまでも「ビジネス」。立米1万円では山にお金が戻らない、誰も幸せにならない。研究会は最低でも立米4万円以上で売れる丸太の生産を目指している。
シンポに参加した左から竹本三千雄・有馬啓子・横尾国治・島崎公一の四氏。