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大阪市住之江区平林南1-1-8 大阪木材会館2F

2016年7月22日

第3回センダンシンポに80名超参加

 

 

(公財)日本木材加工技術協会関西支部早生植林材研究会(代表世話人・横尾国治氏)・(一社)平林会(理事長・村上高兒氏)共催のシンポジウム「耕作放棄地へのセンダン植林と活用」が7月22日(金)午後1時30分より住之江区平林南の大阪港木材倉2階大会議室において80人強(昨年は60人)が参加して開催された。国産早生広葉樹「センダン」をメインテーマに平林で開くシンポは3回目。

平林会 開会の挨拶をする小林平林会木協理事長

両者は2年前、(一社)平林会が大阪市の一般競争入札(プロポーザル方式)によって落札した「平林ウッディパーク」道路沿い北側(5m×70m)に熊本県発祥の「センダン」10本を植林した。本州初の試み、都市部での試験植林は稀有のこと。この植林が起爆剤となって京都府立大学の大野演習林や兵庫県宍粟市のFS波賀等に波及、西日本各地(一部関東を含む)全域を巻き込みながら「センダン植林」の輪が急速に広がっている。この大きな要因の一つが林野庁と京都府立大学・京都大学の存在。特に地元の近畿中国森林管理局が「27年度重点取組事項」の中に「センダン植林」を明文化した。さらに27年度の林野庁の林業白書にも記され、驚くべきことに林野庁の28年度森林・林業基本計画にも「センダン」が登場したのだ。国の「センダン」に対する熱い思いを感じる。

センダン植林は産業用

「センダン」植林はあくまでも産業用植林、商売に繋げることを目的としている。国産広葉樹を自前でつくる、それも短期間で。研究会は当初目標を年100万立方に設定。伐期を迎えているスギ・ヒノキのあとに何を植えるか?もちろん、スギ・ヒノキも大切だがそこに「センダン」を一部加える。これは普通の考え方だがそれでは量的に足らない。研究会では植林候補地にあえて「耕作放棄地」を選んだ。つまり農業と林業のコラボである。農地には様々な規制や既得権が存在するのは百も承知で「耕作放棄地」に的を絞った。「センダン」を植えることによって、50年~60年かかる従来型の林業経営を10年~15年の農業的林業経営(収穫型)にシフトする試みだ。

1年以上前から横尾代表らは兵庫県養父市の「農業特区」にコンタクトして提案、縁あって同県宍粟市にもアタックした。その甲斐あって今年4月、宍粟・養父両市の「耕作放棄地」での「センダン」植林が実現した。そのため今回のシンポは過去2回と若干異なる「センダンの収益・利活用」が大きなテーマとなった。

シンポは京都大学村田功二・京都府大宮藤久士両氏が交代で司会を担当、冒頭、小林健次郎平林会木協理事長が「私も当初からセンダン植林に関与しましたが、こんな大きな波になるとは想像もしなかった」と驚きを露わにし「国も認知している。平林としても全面的に応援したい」とエールを送り、続いて平林会顧問の高野大阪市議が「早い、早いと聞いてはいたがこんなに成長が早いとは・・・。皆さんの先見の明に感嘆しました。センダンを通してここ平林から全国に発信して欲しい」と述べ、発表に入った。

林野庁近畿中国森林管理局がエール

まず近中局の中村彰男課長が「28年度近中局の重点施策」をテーマに、なぜ今「早生樹」なのか?を①林業の現状と課題②広葉樹に依存する木材加工業の課題を説明し「前述2項目の対応策として『早生樹』に白羽の矢が立った」と話した。センダンはマホガニー科に属し家具・調度品としての利活用にも有望な樹種、高額取引の可能性もあるという。

センダンの採算性

熊本発のセンダンの仕掛け人・横尾謙一郎氏(熊本県林業指導研究所)は4月の熊本地震の被災者、車内での生活を数週間余儀なくされたという。テーマは「耕作放棄地でのセンダン植林の採算性」。(1)センダンの植栽適地(2)耕作放棄地における育林費用(3)伐採による収入、の3項目について説明した。地拵え・植付・下刈り・間伐・施肥・芽かき等の経費と伐採収入による収支は、植栽密度400本/ha、丸太4万円(立米)の条件下で純収入10万円/ha。あくまでも試算であり施肥等の経費削減は十分可能だとするが「約20年の短期伐採、補助金なしでも赤字にならないのは大きなメリットです。育林経費分の補助金をもらえばその分が収入となる。さらに自家労働による人件費の抑制も可能だ」と話した。会場からいろんな質問・意見も出たが補助金なしでも「センダンは利益が出る」ことが判明、これは画期的なことだ。

センダンの育成と注意点

続いて熊本県天草から参上した福田国弘氏(センダン未来研究会)が生産者の立場から「耕作放棄地におけるセンダンの育成方法と注意点」についてスピーチした。「センダン」は河川沿いや沢沿い・谷筋に自生し、乾燥地は適さない。畑跡地も問題は少なく水田跡地も水路を設置して水分の適正化を図り排水対策を講ずれば植栽は可能。日照量の確保が大切で「芽かきは早ければ早いほど伸びが良くなる」と話した。芽かき開発者の言葉は重い。

宍粟市の耕作放棄地にセンダン植林

次に登場したのが大畑利明氏(宍粟市早生樹活用研究会)、4月29日、宍粟市の耕作放棄地に初めて植林した人物である。まず淡路島の1.1倍の面積を有する宍粟市の現状と課題を説明し「過疎化と少子高齢化が劇的に進み、この課題をなんとか克服したかった。その中で山田さん(兵庫県農水技術センター)と出会いセンダンと出会った」という。「再造林が進んでいない。スギ・ヒノキの経済は成り立たない。地域振興のための林業再生だ。林業でプラスになる、目からウロコだった」と大畑氏。遊休農地の調査と仕訳、農業委員会と市町村との折衝、大変な作業だったという。大畑さんの投じた一石が宍粟市と同じ環境で苦しむ地域に伝搬してほしい。4月29日の植林は日経新聞で全国に発信された。

実績報告と基礎データ

続いて登場した3人の講師〔京都府大糟谷信彦氏・京都大学村田功二氏・京都府大宮藤久士氏〕は早生植林材研究会のメンバー、研究者らしくセンダンの「実績報告」・「PBの物性及び生物劣化抵抗性」・「基礎データ」を学術的に報告、耐久性・防蟻防虫性能の優位性等を実験結果の数値で紹介した。

平林会 終了後、参加者は平林の植林地に移動、2年3か月で8mに成長した数本の「センダン」を目の当たりにした。【写真参照】