(一社)平林会は(公財)日本加工技術協会関西支部早生植林材研究会と共催でシンポジウム「国産早生樹植林とその可能性」を8月4日(月)午後1時より住之江区平林南の大阪港木材倉庫鰍Q階大会議室において開催、東は茨城県、西は九州熊本・天草方面から70人強が参加しました。
すでに両者は4月、(一社)平林会が大阪市の一般競争入札(プロポーザル方式)によって落札した平林テニスコート跡地道路沿い(5m×70m)に10本、京都府立大学大野演習林に10本、熊本県からは運んできた早生樹「センダン」の苗木を植え、試験植林事業をスタートさせています。2地域に加えて兵庫県、三重県でも同様のセンダン植林が始まっています。
今回の試験植林は、日本で初めてともいえる広葉樹の植林であり早生樹という特徴を備えています。シンポジウムは、その試験植林を検証することによって、針葉樹(スギ・ヒノキ等)ではない広葉樹の植林―早生樹(成長速度は針葉樹の2倍〜3倍)―が産業用植林として日本で成立するか否かの可能性を探る第一歩、まさに画期的な試みです。
京都大学村田功助教が司会を担当、冒頭、村上高兒平林会理事長が「ようこそ平林へ。平林はこれから木材の街として復活します。例を見ない都市部での試験植林、ここ平林から木材の先端情報を発信したい」と歓迎の言葉を述べ、シンポジウムがスタートしました。
まず、「センダン植林の意義」をテーマに主催者の横尾国治氏(ユニウッドコーポ社長、平林会常務理事)が講演、早生樹の定義や平林でのセンダン植林に至った経緯と今後の木材ビジネスに及ぼす効果等に言及、平林会事務局の島崎公一が平林の街づくりと試験植林による地域への相乗効果について期待を込めて話しました。続いて、大阪府木連三宅英隆専務が「センダンは大阪では慣れ親しまれた木です。中之島公会堂付近にはかつて『栴檀(センダン)木橋』が架かっており、三休橋筋の街路樹はセンダンです」と述べ、国レベルで大問題となっている「耕作放棄地(農廃地等)」でのセンダン植林が果して可能かどうかを「アグロフォレスト」を視野に入れつつ行政の支援制度を紹介しました。
少憩後、熊本県天草の指導林家福田国弘氏が約20年前、故福田富治氏(父上)が技術的なやりとりの中で広葉樹の特徴である「枝分かれ」を「芽かき施業」によって通直材にする技術を開発、熊本県林業研究所の協力を得て育成、福岡県大川において家具・ツキ板の試作にまでこぎつけた研究過程を発表しました。
センダン植林の中心人物である横尾謙一郎氏は本年4月、熊本から大阪まで新幹線に乗ってセンダンの苗木20本を運んできた人物。同氏は、センダンの成長比較・施業試験・植栽密度・枝打ち実験・芽かき試験・植栽適地・短伐期施業・利用等を研究者らしく発表し、結びに「現在熊本県では耕作放棄地を中心にセンダン林の造成の検討が進められている。センダン材の出荷体制の早期確立と家具業界を中心とした木材加工業界、研究関係者との連携がより必要となる」と述べ、出席者の理解と協力を要請しました。
国内では数少ない広葉樹(早生樹)の植林については児嶋美穂氏(京大・東大農学研究員)が「本邦でのユウカリ利用の模索」と題して講演、松村順司九州大学教授が「国産早生樹の可能性」について、センダン・チャンチンモドキ・ユリノキ・ユーカリ・ケンポナシの検証結果を報告しました。シンポジウムは午後5時からの総合討論に続いてテニスコート跡地の植林現場を見学、その後の情報交換会は大変盛り上がりました。
村上理事長が歓迎の言葉
高橋住之江区長が挨拶
満員の会場内
大阪府木連三宅専務
横尾国治氏の講演
横尾謙一郎氏の熱演
熊本県指導林家・福田国弘氏
東京大学の児嶋美穂さん
九州大学松村順司教授
質疑応答
試験植林の現場視察風景
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