第2回『平林まちづくりを考える会』

テーマ『「お一人様」になって、あなたは、どこで、誰と、どのように暮らしますか?  
−元気なうちに備える高齢期の住まいと街−』
第2回『平林まちづくりを考える会』が3月27日(火)午後3時より、平林木材会館6階大会議室で開催された。今回の講師は、大阪市立大学大学院生活科学研究科・三浦研准教授、テーマは『「お一人様」になって、あなたは、どこで、誰と、どのように暮らしますか? −元気なうちに備える高齢期の住まいと街−』



冒頭、当会座長の大阪市立大学日野教授から簡単な挨拶と趣旨説明があり、セミナーに移った。

まず三浦准教授は「このテーマは大変難しい問題で、団塊の世代の後期高齢化への対応を今、元気なうちに考えておくべきだ」と述べた。

=以下 大阪市大佐久間先生のレポートを列記する=




◎高齢者人口の将来推計
・2040年には人口の1/3が高齢者。
・高齢化社会は確実にやってくる。
・それを見据えた住宅整備やまちづくりを考えていかなければならない。
・三浦先生の祖母は102歳でなくなったが老人ホームを嫌っていた。老人ホームは「お世話になるところ。「社会的な措置で収容されるところ。行きたくないところ」というイメージが強い。

◎2000年にグループホーム(GH)が登場した
・従来にない形態。それまでの施設は大人数を一カ所に収容して寝たきりをイメージする。
・GHは7−8人で集まって家庭的な暮らしを専門的なスタッフが支える形態。
・住宅らしい環境で高齢期を迎えるようになる。
・こもれびの家:木造。非常に人間的なものになった。モデル的なもの。1億円ぐらいかけてつくった。住宅としてつくったのではなく、GHとしてつくっている。住宅らしく見せるように工夫している。竹垣、井戸にもしたような水をくむ場所、玄関、小さめのスケールにしている。認知症の人は大きなスケールだと身構えてしまう。小ぶりな入り口にしてある。職員は割烹着を着ている。ナースのような格好をしていると身構える、病院に来たと勘違いしてしまう。

◎2002年ユニット型の施設が登場
・GHは効果があった。家庭的な雰囲気は認知症じゃない人にとっても良い。厚生労働省、大きな施設にも取り入れようとした。
・秋田の鷹巣町の例。GHがたくさん集まっているようになっている。大阪市は9%、日本全国では24%ぐらい。それまでは4人部屋が基本。今はだいぶよくなってきている。

◎都道府県別高齢者人口の推移
・年配者が増加する地域は地方や田舎でなく都市部である。大都会でお年寄りが増えるのは団塊の世代が高齢期に入るから。
・世帯主75歳以上の単独/夫婦のみ世帯の増加する
・単独世帯・夫婦のみ世帯がほぼ倍になる。

◎施設と住まいの歩み寄り
・国は財源がない、介護保険料もない。
・住まいの側に施設の機能を付加することが検討されている。
・小規模多機能:マルチ機能、夜の訪問介護、訪問看護。施設と住まいが重なり合ったような状態になっていく住宅。自宅に介護を届けようとしている。
・住宅におけるバリアフリー環境整備
・今の住宅はバリアフリーが進んでいない。
・住宅側は高齢者には住みにくい構造になっている。

◎65歳以上人口に占める介護施設、高齢者住宅の整備
・アメリカ、6.2% 英国、11.7%、日本、4.4% 。介護保険施設は整備してきたが高齢者住宅が未整備。シルバーハウジング、高齢者向け優良賃貸住宅、有料老人ホーム。
・高齢者住宅0.4%→2030年までに3%までに。

◎施設ケアと小規模多機能
・病院の部屋と廊下が地域に散らばったもの。
・在宅を面でとらえていく。生活圏域でサービス提供。
−具体例:滋賀県東近江市、古民家→「かじやの里の新兵衛さん」。広島県庄原市、旅館→介護施設。「横山旅館」という高齢者施設。
・ストックを活用しながら、施設整備を進めていく。

◎要介護者の在宅継続には見守り・生活支援
・在宅を支える上での課題(1)
・在宅サービス。回転寿司、とればとるほど値段が上がっていく。
・小規模多機能。いつでも来てくれる。なんど呼んでも定額。
・利用されている人は同居している人が多かった。7割が家族の同居、近居。介護サービス、自分の頭がしっかりしている、相手に伝えられる人には効果がある。
・認知症になって判断能力が落ちると、自分がどういう風にしてほしいかが伝えられない。→うまく支えきれない。
・在宅を支える上での課題(2) きらく苑の社会福祉法人。いつでもいけるように拠点設置。尼崎の事例。当初は夜間ニーズも想定していた。24時以降、ほとんどない。18-21時、6-9時のニーズが多かった。
・在宅のホームヘルプの営業時間、9-18時まで。朝起きてからと寝る前までの時間がなかった。在宅を支える上での課題。
・同居家族が近くにいる、朝夕の時間帯にしっかりとサービスを届けることが課題。

◎サービス付き高齢者住宅
・2011年秋より民家で住宅を作ってもらう。住宅にサービスがついていないと機能しない。1階に介護の拠点を入れ、上階をバリアフリーの賃貸住宅。
・要件としてのバリアフリー構造(25m2ルール、段差がない、手すりがある、廊下幅の確保)、人がいてください(ケアの専門家、昼間1人。同居の家族ケアのようなもの)。
・賃貸借契約が基本→従来は利用権契約。会社が倒産してしまった場合居住権が保証できない。賃貸借契約は居住を保証する。しっかりと賃貸借としてください。
・礼金や設備協力金を徴収してはだめ。
・前払い金の保全措置、返還ルールをきちんと作る。
・10年間で60万戸目標。(GH、年間2万戸) 年間3万戸ぐらいでつくられている。

◎サービス付き高齢者居住累計
・11類型ある。151万戸。
・外国の人に説明しづらい。日本の官僚制度、任期が3年。3年の中で先輩を引き継ぎ、オリジナリティを出す。マイナーチェンジの積み重ねになってしまう。
・エンアパートメント(大阪市西成区):縁・エンパワーメント+アパートメント。介護をつけるだけじゃなくて遊びや仕事も提供する。うどん屋→お年寄りに日銭を稼いでもらう。
・オードリー(新潟市):女性だけのグループリビングサービス付き高齢者向け住宅。菜園付。

◎今後の課題
・緊急時の対応:保証人、身元引受人も高齢化する
・重度ケアの問題:介護度が重くなったとき、認知症の進行
・必要となるケアと質:夜間の介護。
・ターミナルケア:
■中間まとめ
・高齢者施設をつくるよりも在宅に高齢者サービスをつけるようにしている
・サービス付き高齢者向け住宅をつくろうとしている
◎施設の床、はきものについて
・施設を家だ家だと言いながら家の中で靴を履いて生活をしている。
・民家を改修した宅老所:靴を脱いで、裸足で過ごしている

・職員、年寄りがどんな服、どんな靴を履いているのかを調査した。
・病院、施設は靴が多い。グループホームはスリッパ。宅老所は靴下が多い。
・施設は車いすで高さを設定する。床に座ると、おかしくなる。窓の高さが高い
・お年寄りにとってみれば普通に過ごしている。
・施設の床、硬くて冷たい。施設の廊下幅、2.7m。廊下を横断するときに伝うものがなくて転んでしまう。
・宅老所:はいはいで移動。職員も靴下で作業。
・履き物の調査、靴系と素足系に分化する。→構造(木造か鉄骨RCか、面積広いか狭いか)。木造で住宅スケール(400m2程度)だと素足が多い。
・大阪市内住吉区の小規模多機能:床を二重床。九州の新しい介護施設:畳を敷いて靴を脱ぎやすく。
・転倒→骨折の防止にもいい。
・コンクリートの施設は硬い。木造の住宅は柔らかい。
・転倒骨折の比較の図:根太が入っていると転倒骨折率が有意に減少する。
・ほっとけないネットワーク:泉北NT。空き住戸改修プロジェクト。空き店舗地域レストラン、配食。エリア全体で小さな高齢者住宅に近い機能に。
・地域全体でネットワークを組めれば、地域全体で仕組みができる。
・ゆいまーる那須(那須町):ワーカーズコレクティブ。サービス付き高齢者向け住宅。終身建物賃貸借契約。入居時に一生分の家賃を払う。人数がまとまれば平均年齢の予測ができる。早く亡くなれば損、長生きすれば得。
リスクシェアができる。とりあえずでまとまった金額を払えば、家賃の心配をしなくていい。
・ワーカーズコレクティブ。自分たちで仕事をつくって自分たちで働き手にもなる。たとえば、送迎ドライバーは住んでいる人。本部長、責任者になることで住民でもあり施設の管理者にもなる。
・100年コミュニティ。3期ぐらい、30年ぐらいにわけて設定。
・隣に牧場があって、牧場で作業ができる。NTTデータでやっているカフェの従業員にもなれる。
質疑

○島崎
・まちづくりの関連だったが個人的関心が強くなった。自分にとっては先のことだと思っていたが備えあれば憂いなしだとは思う。個別のサービス、選択肢もわかっていない。どういうものがどんなもので費用は。要介護の意味すらわかっていない。

→介護保険:要介護1−5,要支援1−2。ある程度不自由になってくると要介護認定。まず、地域包括センターに行く。区の中に複数箇所ある。入院されたりすると医療機関で系列につながることもある。要介護4−5,寝たきりに近い。3は車椅子。要介護1−2であれば、在宅でがんばれる。認知症の場合は体が動いても在宅継続が難しい場合がある。認知能力による。
要介護4−5、単身では在宅は無理。ヘルパーの谷間を乗り切れるかどうかが在宅の分かれ目。要介護1で15万円程度のサービスが利用できる。
特養は年収によって補助額が変わる。

・シルバーハウジング:公営住宅。LSA、常駐職員。89年にできた施策。お得なもの、行政的にコストがかかる。増えていない
・サービス付き高齢者向け住宅:厚生年金モデル。15-6万円前後
・高齢者専用賃貸住宅:2005年につくったばっかりのもの。高齢期バリアフリーの住宅が少ない。お年寄りに賃貸住宅を貸してくれないという問題があった。貸してくれるものをつくろうというのが趣旨。住宅は行政の指導権限がない。群馬県で東京の人が巻き込まれた事例。施設か住宅かあいまい。取り締まる権限がない。高齢者向けの劣悪なものが増えた。→サービス付き高齢者向け住宅にバージョンアップ。
・高齢者向け優良賃貸住宅:98年。バリアフリーの住宅がない。公営住宅をつくれない→民間でやって、家賃補助する。1/2国、1/4県、1/4市町村→自治体がいやがった。URは供給していた。
・認知症グループホーム:12-15万の相場
・有料老人ホーム:お金持ちを対象としたもの。介護保険制度を当てはめられる、だいぶ安くなっている。
・養護老人ホーム:制度的にはほとんど増えていない。63年、老人福祉法が作られたとき。家がない方を入れるためのもの。当時は年金制度もしっかりしていない。今あるものも築30-40年
・軽費老人ホーム(ケアハウス含む):お金がない人が安く住めるように。ほとんど増えていない。食事を出す必要が出てきてケアハウスと呼ばれるようになった。
・特別養護老人ホーム:多い。43万床。日本の介護の中心。43%が個室型に整備されている。かつて国が公費を入れてつくっていた。42万人待機者がいる(重複しているので、20万人ぐらいと言われている)。なぜ待機するか? 在宅サービスが手薄→特養に入りたいというニーズを生んでいる。在宅サービスとの比較。行政的コストはどちらともいえない。
・老人保健施設:在宅と病院の中間施設。病院で急性期が終わると老人保健施設に入って在宅を目指す。実態として老人保健施設と特養との違いはほとんどない。
・介護療養型医療施設:医療の急性期は終わっているが、医療は必要としている。医療保険の管轄になる。


○日野
・父も要介護2で歩行訓練中に転倒骨折、要介護5に。介護療養型医療施設

○渡部
介護保険適用の年齢制限があるのか?
→原則60歳以上。介護認定を受ければサービス受けられる。特定疾患は特別に配慮する。若年性痴呆症も

○井波
建築の関係。きらく苑、特養に近いもの、低コスト、GH。100人以下、国の施策がその都度ブームが変わる。一時期特養のラッシュ。最近中規模の介護施設が多い。最近思うのは、
泉北NTは若い人が入居して、ほとんど老人のまちになっている。エリアで年齢構成がアンバランスになっている。郊外部は年寄りのまちになっている。ケア施設を建てても地域のバランスが悪い。年寄りだらけでサービス提供者がいない。海外移住者がサービス提供をしている。エリアのバランスが気になっている。まちのなかで住みよいまちづくりをしていかないと無理なのでは? 年金も破綻するだろう。
→介護する担い手が集めにくい。高校卒業した女の子の1/2が看護師か介護士にならないとまかなえない。成り立たない。諸外国では外から人を入れている。フィリピンに日本語学校をつくっている事業者もある。
→65歳になったから高齢者、がいままで。75歳ぐらいにならないと高齢者と見なしてくれない。要介護認定をうけない8割の高齢者の活力を同意かすかが重要。
→オランダでは、施設整備する際にエリアのバランスを維持するために集中しないようなルールを作っている。将来的には必要も出てくるだろう。東京や大阪で施設もできる、老人も集まる、職員が集まらない。

○島崎
徴兵制みたいにできないのか。国民の義務として。
→若い人にとっては悪くない。汚い、きついと言われているが、人に役立って感謝される仕事。やりがいのある仕事。

○日野
不況になっていて介護職募集で来るらしい。だめな人は3日に辞める。やはり難しいらしい。家内がケアマネージャーをやっている。職員を集めるのが大変。若い人でも結婚して生活できるのも厳しい。昔から看護師さんの処遇問題があったが、介護士さんの処遇問題も根深い。現場はしんどいようだ。
→夜勤が入る。夜に入れる人が限られてしまう。

○小林
若い人が経験したら違ってくるのでは。
→ドイツ良心的兵役拒否の仕組みもある。

○日野
だれでもできるわけではない。ヘルパーの資格もないとだめだろう

○日野
まちづくりとして、ケアセンターを使うというときもある。高齢者だけ集めても街として成り立たない。高齢者のサポートを地域として取り組むような事例はないのか。

○日野
高齢者向けだけでなくて、木育を使ったものと連携する事例もある。
→幼老ケアは効果があると言われている。幼児と高齢者。子育て支援とデイなどを連携させる事例はある。お年寄りにとっては子どもが来るだけで目がかがやく。散歩の動向も役割が与えられていいこともある。しつけには認知症のおばあちゃんがいい、とまで言われている。繰り返し同じことを言うので。

○日野
将来的にも可能かどうかは別として3世代が交われるような受け皿として、このエリアが果たせるものがないのかという意識があった。高齢者の生きがいという点では、子どもたちの学童保育の指導などをボランティアでやるのも導入されているところ。

○島崎
いまや、ひ孫世代まで育のでは。

○小林
老人施設への用途制限はどうなっているのか。どういうところまでだったら建てられるのか。平林は工業専用地域がかかっている。一部はずれることもある。区画も広い。
→高齢者住宅→集合住宅、寄宿舎というカテゴリ。特養→福祉施設。工業地域では難しい。工業地域は難しかったのでは。煙突が立つようなエリアではないので、行政で判断できるのであれば可能では。